システムアーキテクト試験

概要

 IPA 独立行政法人 情報処理推進機構が実施する国家試験です。
 合格率は12~13%と低く、情報処理試験の中でも高度情報処理試験に位置付けられている難しめの試験です。
 年1回、10月の第3日曜日に試験が行われます。

対象者

 IPAのページの説明を引用します。

高度IT人材として確立した専門分野をもち、ITストラテジストによる提案を受けて、情報システム又は組込みシステムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、情報システムについては開発を主導する者 

https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/sa.html

 私の感覚では、ITストラテジストとしてどのようなIT投資を実施するかなどの大戦略は顧客企業のシステム部門やあるいは情報システム子会社、いわゆるユーザ系IT企業のSEが担当するイメージです。もちろん外部のコンサルなどン協力を仰ぐ場合などもありますが。その戦略に対してシステム全体のアーキテクチャを設計するのが、システムアーキテクトの役割というイメージで、ユーザ系IT企業のものがその役割を担うこともあれば、ベンダーが担うこともあると思います。
 Webサーバ、APサーバ、DBサーバという単純な構成にするのか、いやいや色々なシステムと接続する将来性を踏まえてWebサーバとAPサーバの間にESBサーバを配備するか、といった機能拡張性や、性能・運用などの非機能要件も見据えてシステムの全体設計をする役割を担うSEだと思います。
 日本はシステム開発における分業化が不徹底だという意見をたまに耳にします。私は外国で働いたことないので、よそはそんなに分業化が進んでいるのかどうかよくわからないですが。そのせいか、私は今までシステム開発プロジェクトの体制表で、「システムアーキテクト」という役割が誰なのか明確に記載されているものを見たことがないです。誰かがやらないといけないことなので、できる人がやっている、あるいは誰も全体設計なんかせずにガチャガチャ進んでいく、そのいずれかしか経験ないです。前者の場合、その誰かはとてもプロジェクト内で頼りにされることになり、最大の功労者として扱われるので、そういう意味ではアーキテクチャの能力を有しているとちやほやされるかもしれないですね。

出題内容と対策

■午前Ⅰ

・問題の形式

 一問一答式の4択問題です。全体の6割正解すれば合格です。

・出題内容

 この段階ではまだシステムアーキテクトに特化した内容ではないです。応用情報技術者試験の午前問題の一部が抜粋して出題されている感じです。ここで不合格になると午後Ⅱ以降は採点すらされず、一日完全に無駄にした感じになり、滅茶苦茶気分が落ち込みます。

・対策

 最近は過去問がIPAのページに掲載されるようになってるので、単純な1年前、2年前の過去問というのは売ってないですね。普通に参考書的に解説があって、章末に各単元のよく出る問題をもっと前の試験からもかき集めてる感じですね。いきなり章末問題やって、正答率悪かったり、解説読んでもよくわからない場合に参考書部分読んで再度章末問題を・・・という普通の勉強でよいともいます。
 本業が試験範囲に近い人は1日くらいでサラサラっと終わると思います。本業が遠い人は参考書部分しっかり読む必要がありますね。それは大変なので、応用情報に合格したら覚えているうちに早く受験するのがいいですね。午前Ⅰだけでも一回でも合格すると2年間免除されるので。私はもう4~5年くらい受験してないです。

 



■午前Ⅱ

・出題形式

 一問一答式の4択問題です。全体の6割正解すれば合格です。

・出題内容

 ここからシステムアーキテクト関連の問題が増えます。他の分野も出題されますが、ほんの少しです。これも全体の6割正解すれば合格です。

・対策

 これも本業がシステムアーキテクトに近い開発系のSEならそれほど難しくはないです。勉強の仕方は午前Ⅰと同じです。参考書の章末問題といて、わからないところ答え見て、いまいち理解できないときは参考書部分読んで・・・ですね。



■午後Ⅰ

・出題形式

記述式です。割と長い文章を読んで、文章の中で虫食いになっている部分を埋めたり、あるいは「A課長はなぜログの保管形式に問題があると指摘したのか?30文字以内で答えよ。」みたいな問題です。
 大問が3つ設定され、そのうち2つ回答して、6割正解すればOKです。ちなみに昔の情報処理試験は4問中3問回答しなければならなかったのでとにかく時間が足りず、午後Ⅰが最難関の印象でしたが、たったの2問でよくなったので時間余りまくりです。

・出題内容

 文章題です。印象としてはシステム開発における割と狭い範囲の設計力を問われる問題が多いです。前述のような「何故~~という設計にしたのか?」とか「Y課長が指摘したセキュリティ上の問題点は何か?」とかですね。設計なり計画なりがそれなりに進んでいる状況で、その設計や計画に対する問題点の指摘や改善案などをこたえる感じで、あんまり全体設計感はまだないです。

・対策

 用語を知らないと解けいないとかそういう問題は見たことないです。普通に設計レビューに参加しているつもりで、普通に問題点の指摘とか改善案の立案ができればよいという感じなので、個人的には中堅SEにとっては最も簡単な部分ではないかと思います。
 対策としてはやはり過去問です。過去問で感覚をつかんでおかないと、「普通に考えるとこういう問題なんだが、単純すぎやしないか?こんな単純なことが正解なわけない」みたいな思考に陥ります。普通のことを普通に回答すればよいだけなので、その辺の感覚とか、あと長い文章を読む練習程度に過去問をやればよいと思います。
 なお、私はシステム開発を生業つぃていない、あるいはネットワーク設計とか狭めの分野を担当しているSEがどういう勉強をすればこの試験に受かるのか、よくわからないです。
 

■午後Ⅱ

・出題形式

 論文形式です。3つお題が与えられて、そのうち1つに回答し、A判定であればOKです。例えば「非機能要件」をテーマだった場合、こんな感じです。

  • 非機能要件って大事だよね、最近注目されてるよね
  • 要件定義でがっちり定義しておかないといけないよね
  • こんなプロセスやあんなプロセスで定義していく場合多いよね
  • あなたの経験に基づき、非機能要件定義に関して以下の問いに答えよ

 問いは(ア)~(ウ)の3問で大体こんな感じです。

  • (ア):あなたが開発に携わった業務と情報システムの概要を800字以内で述べよ
  • (イ):設問(ア)で述べたシステムに関して非機能要件をどんな視点でどのように定義したかを800字~1600字以内で具体的に述べよ
  • (ウ):設問(イ)で述べた要件定義について、意思決定者に承認をもらうためにどのような工夫をしたかを600字~1200字以内で具体的に述べよ

 原稿用紙にがっつりシャーペンや鉛筆で3000文字くらいの論文を書く羽目になります。

・出題内容

 テーマは色々で、非機能要件や拡張性を持たせたアプリの開発など、一応インフラ・開発、両方のSE向けの試験と言えるものが出ます。ここでも冒頭で述べアーキテクトによるシステム全体設計感がないのですが、私が勘違いしているのかも知れないですね。アーキテクトというものを。あと必ず問3は組み込み技術者向けの問題が出ます。平成29年ははやりのIoTに関する試験でしたね。

・対策①:システム概要について

 本文に入る前に、携わったシステムの名称とか、対象業務とか(金融とか流通とか)参画時期とか、PC・サーバ台数とかあと、自身の役割とかを書かされます。ここは正直問われる内容が何であっても大体同じ内容を書けばよい部分だと思うので、あらかじめ何を書くかを決めておいた方が良いです。どういう事を書かされるかはどの対策本を買っても大体掲載されています。
 ちなみに、対策本にはシステムアーキテクトの試験なのに、役割を「プロジェクトマネージャ」とか書いてはいけない、というような注意書きがありますが、本当にダメなのかどうかはわからないです。ダメならなんで選択肢にあるんでしょうね?
 

・対策②:対策本について

 私はいつもこのシリーズを使っています。



 これには論文の例文が記載されており、例文には吹き出しで、「ここで自分の立場を明確にしている」とか「問題を強調している」みたいなポイントがきさいされています。それを見ながらせめて1回は試験までに練習しておいた方が良いですね。問題用紙の白紙ページを使って、まずは章構成だけのサマリーを書いて・・・とか急にはできないですし。
 ちなみに、同じ翔泳社でも筆者はきっと違うんでしょうね。以下のプロジェクトマネージャ試験の参考書の論文の書き方が一番実践的でした。



 やっぱり論文は難関みたいで、翔泳社以外からも論文に特化した参考書とかが売っているのですが、ざっと見た感じでは、「とっさにこんなきれいな論文書けるわけないだろ」、というような例文が掲載されていることがたまにあります。
 その点、プロジェクトマネージャ試験の解説は「言及しなければならなかったことをが漏れていたので末尾に追記。多少唐突感があるが全然OKだ」みたいな、非常に実践的でした。私が買ったのは2014年版なのでもし今内容代わっていたらすいません。

・対策③:内容のレベルは低くてよい

 午後Ⅰ同じですが、素晴らしい検討とか対策とかを論じる必要はなく、普通のことを普通に書けばよいという印象です。非機能要件の例でいえば例えば勤務管理システムの例で、月末に処理が集中するシステムだが、緊急を要する業務ではないので一定数以上ログインさせずシステム全体がスローダウンしないようにした、とかそんなんで合格します。午後ⅠにしろⅡしろ、問いに答えさえすればレベルは低くてもよいみたいです。あと、字は汚くても合格します。キレイに書けって言われても無理ですしね。急に。

有益度

 高度情報処理の論文がある試験はどれも言えることですが、あまり必死こいて知識を詰め込んで受験に臨むというよりは、過去問を解いて出題内容に慣れる作業だけすれば、後は業務経験だけで十分合格できる試験だと思います。当日よい論文のネタが思いつかなかったらそれまでですが・・・。
 SEといっても色々なので、あくまで一般的な受託開発によりシステムを開発を生業にしているSEの話ですが、私は個人的にはこの試験を保持している人はまずは一定の設計力を持っているのではないかなという目で見ます。というくらいの有益でしょうか?転職市場などでどう評価されるのかはよく知らないです。
 ちなみに世の中には試験だけ合格できるが仕事はできないという人もいるみたいです。午後Ⅰの文章がきちんと理解できて、午後Ⅱでそれなりの文章を書けるのに、仕事ができないというは一体どういうことなのか?

難易度

 繰り返しになりますが、システム開発を担当しているSEにとっては簡単、そうでない場合は、どうやったら合格できるのかよくわからないくらい難しいです。

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